解説!自社のオリジナル商品を他社メーカーに製造してもらう仕組み
自社ブランド商品は、自社の製造ラインで製造・販売するのが基本
市場に流通しているあらゆる商品は、そのカテゴリーまたはイメージなどによって、オリジナルのブランド名を掲げて販売されているものが多くあります。
自社内でブランドを設定する、もしくは新たにブランドを立ち上げて各商品の販売を行うのは、その名前によって商品をイメージしやすかったり、そのブランドでリリースされている商品の品質に好印象を持ってもらうことで他の商品にも手を伸ばしてもらえたりなどの利点が存在するためです。
食品や家電品、アパレル製品や雑貨類など、私たちの身近にある商品は図らずもこういったブランドイメージで選んでいることは非常に多いはずです。 このように、自社ブランドを作って商品を販売するには、それら商品を全て自社で製造し、販売ルートを確保するのが基本とも見られますが、それ以外の方法を採ることによって、さらに商品のバリエーションや販売ルートを拡大することが可能になります。
他社の製造ノウハウを借り、自社ブランド品を製造してもらう
流通の基本として、自社の製造ラインで製造し、それを自社ブランドとして販売する方法は一般的です。品質もその商品に対するイメージも、ブランド名もしくは製造した会社が背負うこととなり、好評であれば商品に付随してそのブランド名も売れていくこととなります。
ただし、そのブランド名で販売する商品の種類をもっと拡大したい場合には、今まで自社で持っていた商品の製造ノウハウでは追いつかないこともあります。今まで作ったことのない商品にも着手したり、メイン事業ではなかったためにもっと高品質なものを自社ブランドとして提供したいと考えたりする戦略も持っていることでしょう。
そのようなときには、その商品の製造ノウハウに長けた他社の力を借り、その会社で製造されたものを自社ブランドとして売り出すという提携を結ぶビジネス形態があります。それがOEMと呼ばれるもので、今や各方面にこうしたビジネス形態が取り入れられています。 特に腕時計などの精密機器はそう簡単に製造できないものであることから、専門の時計メーカーと提携して自社ブランド品として製造してもらうなどといった方法を採ることも可能です。
◆PB製品とODMとの違い
PB製品
PB製品とは「Private Brand」製品の略で、流通業者が販売者となるオリジナルのブランドを作り、外部の製造業者に生産を委託している商品のことです。「PB」とは販売者側の視点から使われることが多い呼び方となっています。
PB生産はほとんどの場合、OEMやODMの方式によって行われます。
ODM
ODMは「Original Design Manufacturing」の略で、依頼された製造業者が企画、製品開発、設計から製品製造までを行う生産形態です。ODMでは製造業者の技術レベルが委託業者と同レベルかそれ以上である必要があります。
OEMとは「他社のブランド品を製造する」という意味
もともとOEMとは、商品を製造する側から見た言葉で、他社のブランド品を製造するという意味合いを持った言葉です。しかし、近年はビジネスモデルの一端として双方が提携したその状態や、この形態から販売されている商品そのものを呼ぶ際にも使われます。
仕組みとしては、ある分野に長けたメーカーが、そのノウハウを求める会社と提携し、自社のノウハウを生かして作った商品を他社に提供するというものが大まかな流れとなっています。
この仕組みは、全く異なったジャンルで活躍している会社が新たな分野を開拓するために利用されることもありますし、同業同士がそれぞれに持つ強い技術と不足している技術を補い合うためにも用いられます。
腕時計などの精密機器に関しては、自社ブランドとして売り出したい会社が時計メーカーと提携し、商品を提供してもらうという形を取っている場合が多くあります。 OEMを利用することで、双方に利益があるwin-winの関係を築くことができるとして各業界で注目されているのです。
OEMの仕組み -自社ブランド品の製造を依頼する会社のメリット-
では、このOEMで提携をした双方の会社がお互いに利益を上げることができる仕組みとはどのようなものでしょうか。
◆ブランド品の製造を依頼する会社
自社ブランド品としての商品を販売したい会社は、その分野に長けたメーカーにOEM製品の製造を依頼します。ここでのメリットは以下のようになります。
◆自社にないノウハウを用いた商品を展開できる
例えば腕時計などは、非常に精密な機構を持っているものであるため、一朝一夕には製造ノウハウを取得できるものではありません。しかし、特にアパレル事業を行う会社では、自社ブランドの名前を冠した服飾雑貨として時計を販売したいと思うこともあるでしょう。
このようなときに、時計専門の技術を持ったメーカーといOEM提携を結ぶことで、自社では作ることができなかった商品を販売することができるのです。
◆高品質の商品を自社ブランドとして販売できる
自社にノウハウがないものでは、せっかく販売を行ってもその品質の保証はやはり難しくなってしまいます。その分野のプロであるメーカーのものを商品にできることで高品質なものを提供でき、ランドネーム自体のイメージを底上げできることにもなります。
◆技術の補填ができる
同じ時計メーカーで腕時計商品を比較したとき、それぞれの会社ごとに部品の品質が優れていたり、組立技術に特化していたり、またはデザイン性に強かったりといった強みを持っているものです。
そこで、例えばデザインに強い会社がより腕時計としての品質を上げたいと思ったときに、その部品機構に強い会社に機構のみを製造してもらい、それを組み込んで販売するという形が取られることもあります。
OEMの仕組み -製造ノウハウを提供するメーカーのメリット-
一方で、自ら持っているノウハウを他社に提供するメーカーには、下記のようなメリットが生まれます。
◆流通ルートの拡大
従来の分野で販売を行うに当たっては、やはりその流通ルートには限りが出てくるものです。そのメーカーと直接提携している物流ラインや小売店などに卸すのみでは、さらなる流通ルートを広げることが難しくなってしまうのです。
そこで、他分野で既に流通ルートを確保している会社にメーカーの商品を提供することで、新たな道が開けることになり、従来とは異なった購買層をキャッチできることになります。
◆業績不振の際の売上アップ
単純に、従来通り製造・販売していると売上が伸びなくなったり、時期的に閑散期に当たる時期に突入したりといった動きはあるものです。そのようなときに他社ブランドに商品を提供できるとなれば、不振に陥っていた売上をその会社に確保してもらうことが可能になるわけです。
◆在庫管理が楽
OEMで商品を製造した際、多くの形態では依頼した会社が全在庫分を買い取る形に収めています。この形なら、売れない商品をいつまでもメーカー倉庫に保管しておく必要がなく、先方に納めた商品の全てを買い取ってもらうわけですから、売上はそのままメーカーに入ることになります。このため、在庫管理が物理的にも財務的にも楽になります。
OEMを依頼する場合の注意点
OEMを依頼する場合には、打ち合わせを行って試作品をよく確認してから生産に入ります。OEMの依頼手順を注意点とともに紹介します。
◆打ち合わせを念入りに
打ち合わせでは、発注元は製品の仕様、デザイン、数量、予算、納期などの希望を伝えます。製品の特徴、どのように製品を作るのかを決め、製造可能な最小ロット数を確認します。
OEMメーカー側は、過去の制作経験を元によい製品をより良い条件で提供できるように提案してください。
◆試作・サンプルチェック
OEMメーカーが製品の試作を作成して、サンプル品は発注元に提出されます。発注元でサンプル品をチェックして修正点を伝えることで、製品が改善されていきます。
製品が改良され最終的な形式が確定するまで、調整を繰り返し問い合わせなければいけないこともあるでしょう。
◆工場とのすり合わせをし、生産
OEMメーカーは、製品の生産に向けて実際に製造する工場との打ち合わせを行います。加工・製造をどこの工場に依頼するか、製造業者はどこか、納期・品質・コストなどの希望に合う製品が作れるかを念入りに確認して、製品の仕上がりや完成時期などをチェックします。
サンプルのチェックまで完了したあとには、納期や製品の品質管理を行いながら作業を進めましょう。
◆品質管理、納品
完成した製品を検品する、作業の最終段階です。仕様書通りに作られているか、動作不良がないか、数量が不足していないかなど、慎重に確認します。
製品や梱包部分に汚れ、ゴミがついていないか、外観もよく確認してください。製品は、発注時に指定された場所へ納期に間に合うように納品します。
納品後の完成品は、OEMメーカーと発注元が意見を出し合い、より良いものへ変えていくことも重要になります。
双方の会社にメリットのある提携をしよう
もちろん、OEM事業の提携を行うにはそれぞれに勝算があることが前提となります。
その面さえクリアすれば、上記のようにさまざまなメリットを双方にもたらすことができるシステムというわけです。
◆オリジナル腕時計にはOEMの活用がおすすめ
自社ブランドでオリジナルの腕時計を販売したいと思ったときは、まさにOEMで取引を展開すれば有利となります。
アパレル専門のブランドでは、なかなか腕時計の知識を持っていることは多くないでしょう。
そのような場合でも、時計専門のメーカーに、商品イメージを適切に汲んでもらい、自社での製造がかなわなかった腕時計を自社のブランドとすることができ、さらなる業績向上やイメージアップも図ることができます。
(まとめ)解説!自社のオリジナル商品を他社メーカーに製造してもらう仕組み
自社内でブランドを立ち上げてオリジナル商品を販売する場合、自社で企画、製造して販売までを行うケースが基本です。しかし、自社ブランドを立ち上げる際に、自社では製造せず他社メーカーに製造を依頼する方法もあり、そのビジネス形態はOEMと呼ばれます。
主にOEMの方式で生産される製品は「PB」製品と呼ばれ、新しい分野を開拓する、また同業同士で技術を補い合うなどのメリットがあるビジネス形態といえるでしょう。対して技術を提供するメーカー側には、製品提供のルート拡大、売上アップなどのメリットが生じます。 念入りな打ち合わせやサンプルの確認、完成品の品質管理などを行うことで、完成度の高いオリジナル製品を製造することが可能です。